江戸時代、歴代の高松藩主が、百年あまりの歳月をかけて完成させた“栗林公園”。築庭された江戸時代当時、歴代高松藩主は賓客を招いた際、おもてなしする場所として利用しており、古くは”栗林荘”と呼ばれていました。
紫雲山を借景に、6つの池と13の築山を巧みに配した回遊式庭園で、一千本とも言われる松、季節の花々に四季折々の風情が感じられます。その魅力は、“一歩一景”という言葉で表現され、一歩進むごとに景色が変わると称えられるとおり、いつ何時も訪れる人を魅了してくれます。
「お庭の国宝」とも称される国の特別名勝に指定されており、文化財庭園では日本最大の広さを誇ります。また海外では、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で最高評価三ツ星に格付けされ、世界シェア1位のガイド本 ロンリープラネットでは「2022年訪れるべき旅行先」として取り上げられるなど、栗林公園の魅力と芸術性は、海外メディアでも高く評価されています。
インバウンドの需要が高まる近年は、香川県を代表する観光地、また日本らしい大名庭園、文化財庭園として、国内観光客だけでなく、各国の様々な分野の専門家(建築、庭園、芸術、環境、地水質、動植物など)からも注目されています。
栗林公園園内ガイドマップ
栗林公園は、来園者それぞれの目的や視点によって、散策や視察は多様にお楽しみいただけますが、なにぶん文化財に指定された庭園の中では日本一の広さです。(平庭部の広さは約16.2ヘクタール、東京ドーム3.5個分。背景の紫雲山を含めた面積は約75ヘクタール)
「短時間で効率よく廻りたい」、「ポイントだけ見て歩きたい」とおっしゃる方のために、耳より情報とともにおすすめコース(60分+和船30分)をご案内させていただきます。※60分コースの内、掬月亭内の見学・抹茶体験時間(約20分)も含んでいます。掬月亭に入亭するためには、入亭料 お一人700円(お抹茶・お菓子付)、または、お一人500円(お煎茶・お菓子付)をお支払いください。
【栗林公園 おすすめコース】東門から入るコース(60分+和船30分)
①商工奨励館「讃岐迎賓館」
東門入ってすぐ右手、栗林公園の中央に佇む「栗林公園商工奨励館」。起源は、明治32年、旧・高松松平藩主の別荘・桧御殿跡に建てられた「香川県博物館」にあります。平等院鳳凰堂を模したとされる左右対称の造りは、帝室技芸員(当時の人間国宝)伊藤平左衛門によって、日本古来の建築様式の中に西洋的なデザインも見受けられます。
館内は、「本館」を中心に、「北館」、「西館」、「東館」が回廊でつながれた回廊式建築です。特別感や地域特性を演出できるユニークベニューとして、国際会議やインセンティブパーティー、国際展示会、また講演会や会議、研修、オフサイトミーティングなど、様々なビジネスシーンに対応可能なレセプションホール(北館)、香川県産の旬の素材をふんだんに使ったお料理とお飲物を楽しむことができる「ガーデンカフェ栗林」(西館)を備えています。
散策途中、散策後のご休憩に、「ガーデンカフェ栗林」でお庭の余韻に浸ってはいかがでしょうか。
②お手植え松
栗林公園には、皇族の方々がお手植えされた松が、5本現存しています。お手植え松5本の配置は、向かって右から・宣仁親王(高松宮、大正3年)、・昭和天皇 (大正3年)、・雍仁親王(秩父宮、大正3年)、・エドワード8世(大正11年、皇太子のとき)、・能久親王妃富子(北白川宮、大正14年)。お一方だけ、外国の方のお名前が見られますが、この方は、故エリザベス女王の伯父様にあたる方です。英国王・エドワード8世として即位し、11カ月間王位についたものの、平民のアメリカ人女性と結婚するために退位し、退位後の称号はウィンザー公爵。「英国王冠をかけた恋」として、映画やミュージカルの題材にもなった方です。日本の皇室やイギリス王室と、栗林公園の貴重なご縁を確認することができる場所です。
③鶴亀松
110個の石を組み合わせた岩組は、一見して亀を連想させます。大きく横に枝を広げた黒松は、鶴が羽を広げた美しい姿に見えます。亀の背中に鶴が舞い降りる姿は、なんとも縁起の良い様子です。園内でもっとも美しいとされる松は、「鶴亀松」と呼ばれ、その名も大変おめでたく、栗林公園を訪れた際には、必ず押さえておきたい一か所です。TOKIOの「ザ!鉄腕!DASH!!」をはじめ、数々のメディアにも取り上げられました。
④箱松・屏風松
北湖周辺には、日本庭園らしい松の生垣が趣深く配置されています。奥にそびえる「屏風松」は、北庭の建物を南庭から隠す役割を担い、その手前の「箱松」は箱状に整えられ、職人の技を感じさせます。屏風松と箱松の間には松並木の通路が続き、静寂の中、自然の美しさと造形美を堪能できます。箱松の枝は複雑に絡み合い、繊細な生け垣が見どころです。日本庭園史にも取り上げられるこの美しいコントラストを、四季折々の風景と共に楽しんでみてください。
⑤掬月亭・根上がり五葉松
※60分コースの内、掬月亭内の見学・抹茶体験時間(約20分)も含んでいます。掬月亭に入亭するためには、入亭料 お一人700円(お抹茶・お菓子付)、または、お一人500円(お煎茶・お菓子付)をお支払いください。
「掬月亭(きくげつてい)」は、歴代藩主が大切なお客様を招くのにも使われたと言われる茶室です。どの方向から見ても正面に見える「四方正面」の造り(数寄屋風書院造)をしており、園内の風景に美しく調和しています。亭内から開放的な窓越しに庭園を一望でき、四季折々の景色が映し出される池や樹々を、まるで絵画のように堪能できます。
その近くには「根上がり五葉松」という松の木があり、根が地上に露出して美しい曲線を描く姿が特徴的です。樹齢300年を超えるこの五葉松は、天保4年(1833年)に松平頼恕(よりひろ)が江戸で徳川家斉から五葉松の盆栽を賜ったものが植えられていると言われており、大きくなっても盆栽の面影を残しています。
⑥楓岸
「楓岸(ふうがん)」は、文字通り楓が多く植えられた南湖に沿った小道です。秋には紅葉が見事に色づき、南湖の湖面に映える景色は絵画のような美しさです。11月下旬から12月上旬には秋のライトアップが行われ、日中にはない幽玄な風景を堪能することができます。【2024年11月22日(金)~12月1日(日)栗林公園秋のライトアップ期間 開催予定】
春には新緑が彩りを添え、夏は水辺の涼しい風が通り、四季折々の自然の息吹を感じさせてくれるポイントです。
⑦飛来峰
「飛来峰(ひらいほう)」は、園内の景観を楽しむために作られた築山です。ここから南湖方向を見ると紫雲山(しうんざん)を背景に、掬月亭、手前には偃月橋と、まさに圧巻の景色が広がります。日本庭園という人工的な造形美の中でも最大級の拡がりを持ち。自然、建物、橋などのそれぞれの配置が巧みに計算され造形されています。絵葉書やパンフレットに載る写真はここからの眺めが多く、栗林公園を代表するビューポイントです。
実は、ここから眺める景色は、”極楽浄土を拝む(観る)”、つまり仏教における理想の世界とされています。「飛来峰」に立つと西向き、西方浄土の考え方に基づき、「飛来峰」は栗林公園の南東に位置します。また、ある風水師によると「借景に見える紫雲山は龍、龍が南に向いている、龍の東に湖。」、これは”平和”や”幸福”をもたらす方位になっているとか。確かに、高松松平家・五代藩主松平 頼恭(まつだいら よりたか)は、高い学識をそなえ、藩の財政難に多くの打開策を講じており、こういった祈りを捧げていたかもしれません。何を信じるかは人ぞれぞれですが、極楽浄土を拝みに、また平和や幸福を願い、「飛来峰」に登ってみてはいかがでしょうか。
⑧芙蓉峰
「芙蓉峰(ふようほう)」は、園内に配置された築山で、富士山を模した形から別名である芙蓉の名が付けられたといわれています。ここから北湖を望むと、紫雲山(しうんざん)を背景に紅の橋である「梅林橋(ばいりんきょう)」が松林の中で”紅一点”のアクセントとなり印象的な風景です。右手には箱松、屏風松が重なるように見え重厚な庭園美を演出しています。
【時間があれば取り入れたい!】和船乗船(約30分)
栗林公園では、散策だけでなく、和船に乗って庭園の美しさを水上から楽しむことができます。和船は、回遊式大名庭園の景色を異なる視点で味わえ人気が高い栗林公園の楽しみ方です。約30分をかけて風光明媚な南湖を遊覧します。
和船に乗るには、前日までにインターネット予約をしておくと安心です。空きがあれば当日でも予約できますが、満席になることも多いため、事前予約をおすすめします。
【散策後の寛ぎ】ガーデンカフェ栗林
世界各地、一流の文化施設には、洗練された雰囲気の中、寛ぎを感じ、芸術の余韻に浸る文化レベルの高いカフェが併設される例が見られます。「お庭の国宝」と称される国の特別名勝に指定される栗林公園の場合も例外ではありません。園内唯一のカフェ「ガーデンカフェ栗林」は、商工奨励館 西館に設置されています。
園内を散策したあとは、「ガーデンカフェ栗林」で、“緑の寛ぎ”、“庭園の芸術”、“文化の歴史”に浸る時間を過ごしてはいかがでしょうか。「ガーデンカフェ栗林」は、讃岐の食文化を発信する拠点として、「さぬきダイニング(※)」にも認定されており、貸切パーティーや団体昼食会などにもご利用いただけます。
※「さぬきダイニング」・・・香川県産食材を使用した幅広い料理を提供するとともに、県外からの観光客にも自信をもって勧められる、情報発信力の高いレストランとして香川県が認定する制度。